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【インタビュー】クラシックをメインカルチャーに戻したい―「O.E.T」代表 水野蒼生さん

跳ねる柑橘(@hoppingnaranca)です。


※いつもとちょっと語調を変えてインタビュー記事っぽく(笑)書いてみました。

 

前回も書いた「Orchestra Ensemble Tokyo」

hoppingnaranja.hatenablog.com

 

7月20日に結成記念公演を行う、Orchestra Ensemble Tokyo、通称O.E.Tは国内外で腕を磨く若手音楽家たちで組まれるオーケストラだ。


代表で指揮者の水野蒼生さんは、オーストリアザルツブルク・モーツァルテウム大学で指揮者として学んでいる。彼は今回クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」でチケット販売および公演開催の支援を募っている。

 

camp-fire.jp

 

パトロン(どうも言葉に抱く印象が悪いな、先入観は怖い)になった縁もあり、
CAMPFIREの取り組みと水野さんのブログやTwitter以外に、
このオーケストラの存在を広めるために自分ができることはないだろうか。

そう思い今回、ザルツブルクにいる代表の水野さんに、音大の多忙なスケジュールや公演準備のなか貴重な時間をいただき、オンラインインタビューをさせていただいた。

音声だけでのやりとりで、なぜか接続が悪くなんどもかけ直すなど迷惑をかけてしまった。そして何より顔を合わせたことのない私が聴き手というシビアな条件にもかかわらず、水野さんは現在のクラシックとその外側に対しての思いをざっくばらんに話してくれた。

 

(目次)

 

 

 

 

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©Keisuke Mitsumoto

 

 

O.E.T結成まで

結成前夜、水野さんの取組み

水野さんは現在23歳。20歳からザルツブルクで学んでいる。

 

水野蒼生さん(以下 水野) こっち(ヨーロッパ)に来るときの年齢がみんな結構バラバラなんですが、僕は今月でいまの大学の3年目が終わります。こっちで指揮者として勉強するかたわら、日本で演奏活動をしています。

これまで指揮者として学生オケを5年くらい振ったのと、あとは東京ピアノ爆団という、ライブハウスで爆音でピアノ演奏を行うというイベントを企画していて、この活動では指揮者ではなくクラシカルDJ(クラシック音楽をつないで流すDJ)としてやっていました。

 

aoi-muzica.hatenablog.com

 

水野 この活動はだいたい年に一回程度でやっていて、今年も2月に公演を行いました。既存のクラシックとは異なるあり方ですが、なかなか好評をいただいています。

 

 

 

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©Keisuke Mitsumoto

 

23歳現在、既に精力的に指揮や活動の実績を積んでいる水野さん。今回O.E.Tを結成したのはどういった経緯からなのだろう。

 

水野 もともと、高校から小さいアンサンブルを結成してやっていました。先ほど話した学生オケ、ラノッキオ・アンサンブルというんですが、これを2016年春までやっていました。
ただ、2016年の春に、同学年の仲間が大学卒業で就職したり、プロの音楽家になるなどして、学生オケという形ではこれ以上の活動ができなくなったんです。
オーケストラの活動も続けたかった僕としては、そのころから既に次(O.E.T)のイメージをそれなりに明確に持っていました。SNS展開に注力するなど、コンセプトなどもまとまってはいたんです。ただ、色んな事情からすぐには組織できなくて、まずはザルツブルクで指揮の勉強に集中しようと思っていました。

 

それが秋ごろに、同じザルツブルク・モーツァルテウム大学に通う大井駿っていう指揮者でピアニストの友人がいるんですが、彼と色々オーケストラについて考えるようになったんです。2人とも考えることに共通する部分が多くて。色々構想も進んでいって、年明けになったら結成しよう!という流れになりました。

僕は東京ピアノ爆団の公演のため2月に帰国したんですが、その際に日本の友人知人にこのオケのことを伝えたり、今回の公演に向けて具体的に動きました。会場の大和田さくらホールを抑えたのもこの時です。それで、メンバーを集めて、3月26日、ベートーヴェンの190回目の命日に結成となりました。

 

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O.E.Tのフライヤー。右端が大井駿さん

 

水野 メンバーは国内外で腕を磨いている若手の音楽家たちで、指揮者も入れて35~40人程度です。まだ結成公演に向けて集まってくれたメンバーなので、今後回数を重ねていくことでメンバーも固まっていくと思います。みんな状況も違いますし、オーケストラってどうしても相性があって、賛同してくれたけどやってみて合わないこともあるので。オーケストラって結構流動的なものなんですよ。

 

小回りの利く編成で

通常のオーケストラだと70名前後の編成だが、この楽団は40名以下の編成。この編成数にはどのような狙いがあったのか。

 

水野 これくらいの人数ですと、「室内オーケストラ」と呼ばれる規模の編成になります。各パートが少人数なので小回りが利くのが特徴です。壮大さでは大規模な楽団には敵いませんが、凝縮した音を届けられるのが強みですね。

 

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サロンや宮廷での演奏が多かった古典の時代ではむしろ室内オーケストラが主流だった。その後オーケストラは歴史が進むと徐々に規模が大きくなり、19世紀末にはかなり巨大化したのだとか。極めつけはマーラー交響曲第8番「千人の交響曲」。初演時に本当に合唱を含めた1000人で演奏された作品もある。O.E.Tが今後1000人になることがあれば、あるいはこの曲をやるかもしれないが、今回の編成はベートーヴェンのような古典派の作品をやるにはベストなもののようだ。

 

結成記念公演について―入口のオケとして―

ベートーヴェンの生きざまに惚れた

そう、今回はオール・ベートーヴェンというプログラムが組まれている。なぜベートーヴェンなのだろう?

 

水野 まずいえるのは、最も有名な作曲家だからです。僕達O.E.Tは「入口」となるオケというコンセプトですし、そうなりたい。その最初の公演ですから、それにふさわしい作曲家ということでベートーヴェンを選びました。
あと、単純に僕自身がベートーヴェンが好きなんです。

 

ベートーヴェンなら日本なら小学生でも知っている、偉大な作曲家だ。そんなメジャーな作曲家を好きと公言する水野さん。音大生ってもっとマイナーな作曲家の名前をあげるかと思っていた。

 

水野 好きなのは、特に人間味のある性格ですね。伝記や文献も読みましたし、彼のお墓にもいきました。

 

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ベートーヴェンの墓


水野 ベートーヴェンは自分の感情を100%表に出しちゃう性格なんです。音楽仲間と話をしていても自分の主張は全部出してしまう。それで大喧嘩になって、絶交状態になってしまうこともありました。でも実は人と話したりが大好きなものだから、そのあと寂しくなって、泣きながら謝罪していたり。音楽室に飾られたしかめっ面だけしてる人ではなくて、実はそういうキャラクターなんです。僕らからも共感できるところが多い。

 

生き様がかっこいいんですよね。自分を焚きつけて頑張る人だったんです。日記帳がのこっているんですが、そこにはとにかく自問自答の書きなぐりで、それでモチベーションを維持していたんです。そういう性格が音楽に表れているんですよ。たくさん傑作はありますが、各曲とも、作られたその時のベートーヴェンの感情が手に取るようにわかるんです。

 

モーツァルトも偉大な作曲家です。でも彼は人間臭いというよりも天才。とにかく人間離れしたキャラなんですよね。聴けば彼の曲だっていうことはわかるけど、もう少し詳しくないとその曲についてのことがよくわからない、そんな人なんです。

 

選曲理由はベートーヴェンの”エネルギー” 

なるほど、人間臭いというのは意外かもしれない。そんなベートーヴェンの数ある曲の中で、なぜこの3曲を選んだのか。夏だからアレだが第九とか、エリーゼのために…あれはピアノか。交響曲なら五番(運命)なんかはフレーズも有名だ。

だが今回は第三番「英雄」、ピアノ、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための協奏曲 ハ長調(以下「三重協奏曲」)、そしてレオノーレの序曲第1番。なぜこのチョイスにしたのだろう。

 

水野 今回の中では英雄がメインです。そして、その1つ後に書かれた作品が「三重協奏曲」
この2つは同じころに作られた曲なんですが、この頃の30代前半のベートーヴェンには既に難聴が始まっていたんです。

 

ベートーヴェンはこの難聴のせいで相当苦しんだ、それは私でも知っている話だ。

 

水野 そう、音楽だけが生きがいだったベートーヴェンにとって聴こえなくなるっていうのは地獄でした。難聴に苦しむベートーヴェンは、「ハイリゲンシュタットの遺言」という文書を残しているんですが、それは「今までの自分を殺して生まれ変わる」と、悲壮な決意と読み取れます。

実は、この時期はベートーヴェンの「傑作の森」と言われています。数多くの傑作を作った、彼が作曲家として最も脂がのっていた時期なんです。難聴の苦悩を乗り越えて傑作を生みだし続けた。ベートーヴェンは生まれ変わったわけです。そういった背景があるから、この時期にはエネルギッシュな曲が多いんです。今回僕たちはそのエネルギーを伝えたいと思っています。
若手のオケですから、「若さ=エネルギー」ということで。プロオケには出せない音を出せるのはこの作品ではないか。そういう思いもあって、この選曲なんです。

 

なお最初に演奏されるレオノーレは、続く「三重協奏曲」と同じハ長調C Dur)の曲だ。レオノーレは『フィデリオ』というベートーヴェンが唯一作ったオペラの序曲で、全部で4つある。そのうちの最後に書かれたのが今回演奏する「第1番」だ。フィデリオのストーリーはヒーローというかヒロインの物語なのだが、それでも「英雄的」という要素を含んでいる。

 

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©Keisuke Mitsumoto

 

東京、そして渋谷での旗揚げ

編成、そしてプログラムのチョイスまで「入口となる」「若手音楽家たちの」オーケストラという、O.E.Tのアイデンティティにこだわって選んだ水野さん。
ザルツブルクにいながら東京、そして渋谷を旗揚げの地に選んだのだろう?

 

水野 東京には9つものプロオケがあります。そして、数多くのトップクオリティのコンサートホールがあります。実はこれは世界的に珍しいことなんです。音楽の本場とされるウィーンでも東京ほど多くの本格的なコンサートホールはありません。
僕達O.E.Tは「入口」になりたい。その入口を東京に作ってあげれば、ここからクラシックの世界に入ってくれた人たちが、他の市民オケや最高峰の9つのプロオケに進んでいってくれるんじゃないかって思ったんです。

 

僕達は、少なくとも僕はO.E.Tだけが盛り上がろうという気持ちはありません。あくまでクラシック界全体を盛り上げたいという狙いがあるんです。そのために、この実はクラシック活動が盛んで施設も充実している東京という都市で、まずは同じ世代、若者に伝えたい。
だから最初の公演は若者の街でもある渋谷でやろうと決めたんです。

 

 

クラシック界への思い O.E.Tでの試み

Tシャツ短パンでも構わない―現状を打破したい

東京はプロオケの数や施設の数やクオリティで豊かな都市である。意外な発見だった。確かにコンサートホールは意外なところにもあるし、中には混同してしまいそうなほどよく似た名前のオーケストラがあったりする。
聴く側としては最高の場所?なのかもしれない。だが実際は厳しい。音楽チャートを賑わす音楽ジャンルは増えてきた。ロックやポップスが席巻していた時代から、賛否はあるがアイドル音楽、そしてアニメやゲーム音楽がトップチャートを駆け抜ける。一時ブームとなっていたヒップホップも最近新たなムーブメントを起こしている。だがクラシックは、というと…と書かざるを得ない。

 

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前回も冒頭で書いたが、クラシック、一般の人が敬遠する理由、敷居が高い理由とは何なのだろう?その世界にいる人に、訊いてみた。

 

水野 本格的なクラシックマニアやファンはイロモノを嫌うっていうのがあるんじゃないでしょうか。佐渡裕さん、フジコ・ヘミングさんといった音楽家は、広く知られていると思います。特にライト層というか一般の方に大人気で、クラシック界の「新星」や「誰もが認めるスター」という認識ですが、クラシック界にどっぷり漬かった人たちの間では意識されないか、下手したら煙たがられてしまっています。クラシックを支えてくれている層、その無視できない規模の人達に、派手なことをした人は叩かれる、そんな風潮があるんですよ。全員ではないですが、でもファンの間でこうした深刻な分断があるのが原因の一つじゃないかなって思います。

 

あと、フジコ・ヘミングさんは難聴などのストーリーがありますよね。日本のエンターテイメント界はそういう明快なストーリーが好きで、そっち偏重な部分があると思います。ベートーヴェンも難聴っていうのとあの風貌というところだけがフィーチャーされてそのすぐ先にある魅力的なところが伝えられていない。それがもったいないなとも思います。

 

興味があるけどどっぷりってわけじゃない、そういう人がクラシック音楽に触れる場で、本当に良い曲がなかなか演奏されないなとも思いますね。クラシックの番組とか、さきほどの「新星」とされる音楽家についての特番でもそうです、キャッチーで、有名で、定番の曲しかやらないから、もう一歩入ったところにある真髄ともいえる曲に触れる機会がないんです。

 

O.E.Tはそのあたりを少し崩したくて。多少派手にやっていくつもりけど、中はガチでやりたいんです。

 

前回のブログでも書いたが、クラシックに対するイメージとして「正装していくカッチリした場所」というのがまた敬遠されているのでは、という感じもしている

 

水野 そこは僕はもうTシャツ短パンでもいいと思っています。もちろん、クラシックコンサートに行くんだからオシャレをしたい!という人はそれで素敵だと思います。でもそれを強いたくはないんです。クラシックだって気楽な格好で気軽に聴きに来ていい、僕はそう思っています。

 

リスクを恐れずに選んだクラウドファンディング 

いまの話だけでも水野さんのクラシック界を囲む厚い壁に風穴を開けたいという気持ちが伝わってくる。派手、というか斬新な取り組みと言えば、チケットの販売方法だ。クラウドファンディングでチケットを販売し、あわせて公演開催の支援も募っている。

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これについては、前のブログでも取り上げた。

「自分たちで資産家に当たって地道に資金を集めた方が堅実だ。」
僕らだって勿論そう思う。でもクラシック界の中で身内と小さな市場にしか届けられない。
広い世界に声を届けることを僕は選んだ。入口のオーケストラになるために。プロジェクトが成功すればメディアからの注目も集められる。そこからが本番だ。

O.E.Tがクラウドファンディングをする理由。 - 蒼い日々の中で

 

これからのアーティストと支援者の在り方かもしれない。だがリスクもある手法だ。それは資金が集まらないかもしれない、ということ。そして既存の世界から反発を買うのではないか、という、これも風穴を開ける取り組みがはらむリスクだ。

 

水野 リスクはありますね。実際やってみた結果、どれだけ集まるかわかりません。でもクラウドファンディングは話題性はありますし、それだけプロモーション効果もありあす。クラウドファンディングに関心のある層って、若かったり新しいことに興味のある層っていうイメージで、既存のクラシックファンとは少し違う層だって思いました。それは僕たちが聞きに来てほしい対象で、そういった人たちに僕たちの存在、そしてクラシック界を覗くきっかけを届けられる、最適な手段ではないかと思いました。
企画を進める段階で懸念もありました。でもクラシックファンの外側に向けて、クラシックを伝えるためにはチャレンジが必要だと思ったんです。

 

今回のこの取り組みは、やってみたことに意味があるとはあまり思っていません。成功することに意義がある。クラウドファンディングで成功した取り組みは、メディアに取り上げられたりもしています。成功させて、その後が本番だと思っています。そしてメディアなどに露出して、どれだけ多くの層にアピールできるか。

 

クラシック界が全く介入していないジャンルだから、開拓と言える。あえて新しいこととして、かけてみたということだ。野心的すぎる・・・が、クラシック界が水野さんが言うように閉鎖的な世界なのであれば、この思い切りが必要なのかもしれない。

 

水野 僕自身がいまはザルツブルクが本拠地なので、オンラインでの資金集めしかないという実態もありました。でも僕はこっち(ザルツブルク)でも、日本に向けて情報発信ができるというのは強みだと思います。

 

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オーケストラ運営は簡単なものではないという。有名なオーケストラでも、大口の助成ありきの運営だったりもするという…

 

水野 基本的に赤字状態です。国や地方、大企業など団体の助成なしにプロオケであっても存続は難しいのが現実です。
オーケストラ公演は、稼ぐツールとして不向きなんですよね。団員の人数が多いですし、公演数も限りがある。あとはホールを借りるにも結構お金がかかるんです。
でも今回O.E.Tは、そうした大口の助成なしで行けるところまでやろうって思っています。

 

だから、クラウドファンディングで、「お抱え」みたいな形じゃなくて、皆さんに知ってもらって、聴いてくれる人からの応援でやれる形にしたいと思ったんです。

 

クラウドファンディングは確かにプロモーション効果もある。告知、広告という観点でも新たな切り口を探しているようだ。

 

水野 そうですね、いまクラシックのイベントで、デザインとか、広告のワンパターンっぷりがヤバいじゃないですか。まずPVがないっていうのは致命的ですよね。映像とのコラボレーションも少ないです。
「高尚な音楽をやってるからそんなところで派手にアピールしなくてよい」という姿勢を感じていて、そんなことしてる場合か?って思うんです。

 

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CAMPFIREには告知用のVideoも用意した

 

確かに動画サイトを見ても、コンサートの様子とかはあっても音楽家のPV、MVは、ソーシャルでの活動に精力的なごく一部の人達しかやっていない印象だ。

 

フライヤーにも挑戦を

告知といえば、今回の公演のフライヤーも、これまでのクラシックコンサートではなかなかないデザインのものだ。アニメ調というか、二次元だ。

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イラスト:ゆの(@_emakaw

 

水野さん 今回のフライヤーは、みんな拠点がバラバラなこともあり揃った写真とかが難しかったんです。そこでイラストでやってみよう!という案になりました。
僕が出た高校出身の人でイラストレーターの「ゆの」さんという方がいるんですが、その方に頼んだら快諾してくれて、今回このフライヤーが実現したんです。
お願いしたのは「今までに聞いたことのない音楽を聴いて驚いている表情」でした。僕たちの音楽を聴いて、こういう風になってほしい!という思いがあります。

 

この絵を見たときは、不思議な感情を帯びた表情に引き込まれた。舞い上がる紙をよく見ると五線譜、スコア、ベートーヴェン肖像画…そして少女の首にさがるのは、鍵をモチーフとしたO.E.Tのマーク。遊びゴコロもいっぱいのフライヤーだ。

こういった想いや遊びを込められるのも、イラストならではと言える。

 

叩かれてからが本番 

何から何まで挑戦的に行っている。ただ、反発とかはないのだろうか?

 

水野 僕はこういうことを割と平気で言ったりするんですけど、こうやって考えを語ると「行動力があってすごいね」と言われて、一歩引かれたところで見られてしまうっていうか、壁を感じてしまうんですよ。
今後僕達というか、僕のこうした取り組みってどこかからは叩かれるんだと思います。でも、僕はそれで「頭が出てきたな」と思う。こういう活動って叩かれないと始まらないと思っています。

 

こうだ!って独善的になるのも違うかもしれないけど、現状のクラシック界にはどうしても(身内や新規流入が少ないファンばかりという)市場の問題があります。いまのあり方のままじゃ限界があるっていうのが現実なんです。だから僕は声を出し続けて、行動に移してやっていけば、きっと協調してくれる人も出てくると思うんです。

 

いまのクラシックコンサートは、観衆の平均年齢はやはり高いですし、有名オケの公演とかじゃなければ、実は楽団員の身内ばかりということもざらです。だからどうにか外に発信したい。若い、同世代の人に聴いてもらいたい。そう思っています。

 

 

O.E.T、水野蒼生の今後―タワレコの新譜コーナーにクラシックを―

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©Keisuke Mitsumoto

 

最後に、7月の最初の公演前に聞くのは尚早かもしれないが、O.E.Tの今後の予定や目標を聞いてみた。

 

水野 そうですね、やっぱり最初の公演をして、その反応次第というのはあります。メンバーの入れ替えはあるでしょうし、軌道に乗るまで2,3公演は必要だという気持ちです。次回公演は1年以内にやりたいなと思いますし、まあまずは今回、次につながるスタートを切りたいですね。

 

何度も言いますが、新しいクラシック界の在り方を作りたいんです。今までのあり方を否定したり侮辱したりするつもりはなくて、横で新しいことをやらせてほしいというか、同じことを違うやり方でもやらせてほしいんです。
たとえば、「知識がないからわからない」と言われないくらいにしたいんですよ。ロックやポップスを聴くときに知識なんていらないじゃないですか。それと同じ感じで聴いてもらえるようになればいいなって思っていて。

 

クラシック界の中に喧嘩を売っているつもりはなくて「もっと盛り上がろうよ!」ってメッセージを出したいんです。それと一緒に、外にも「堅苦しい世界じゃないから楽しんでみて」って。

 

タワレコの1階新譜コーナーに僕らの音源が置かれるようになったらいいですよね。だって本当はクラシックがミュージックシーンのメインカルチャーで、商業音楽がサブカルチャーだったんですから、もう一度メインに戻したいんです。

 

インタビューを終えて

水野さんの声には終始嫌味はなく、穏やかで快活な声に、野心と挑戦に燃えるエネルギーと、好きなことをやっている楽しさを感じた。閉塞的な状況に息苦しさを感じている若者という感じ。ただ、ディスっているわけではなくてその姿勢はイノベーティブ。クラシック音楽が大好き、だからこそ、閉ざされた扉を開こうとしているのだ。

 

は今回のO.E.Tの試みを、どうなるのかな?という思いとともにワクワクして見ている。クラシックに少しでも興味がある人は、ぜひ彼のブログや、CAMPFIREのページを覗いてみてほしい。そして、7月20の夜、時間があって何かないかな~という方は、ぜひクラシックの扉を覗いてみてほしい。

 

(文:跳ねる柑橘 画像提供:水野蒼生)

 

公演情報 

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O.E.T公式サイト:オーケストラ・アンサンブル・東京

O.E.T公式twitterO.E.T (@o_e_tokyo) | Twitter

O.E.TのCAMPFIRE(クラウドファンディング):凄腕若手プレイヤーが集結!東京からクラシックをアツくするオーケストラ計画! - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

 

O.E.T結成記念公演「Opening」

2017年7月20日(木)18:30開場 19:00開演

渋谷区文化総合センター 大和田さくらホール

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<水野蒼生 プロフィール>

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©Keisuke Mitsumoto


1994年生まれ。幼少期からピアノを、12歳でヴァイオリンを始める。

2009年から2011年までの3年間、夏に金沢で催された井上道義氏の指揮者講習会に参加し、そこで初めての指揮の手ほどきを受ける。
2011年には同講習会の優秀者に選ばれリレーコンサートに出演し、IMA弦楽アンサンブルを指揮する。

2013年夏にオーストリア国立モーツァルテウム音楽大学にて催されるサマーアカデミーに参加。指揮をペーター・ギュルケ氏に師事。ディプロマを会得。

2014年秋から同モーツァルテウム音楽大学に入学。オーケストラ指揮と合唱指揮を専攻。

2015年夏にザルツブルク州立歌劇場のカペルマイスター:エイドリアン・ケリーの下で
副指揮者としてブリテンのオペラ「ノアの洪水」を指揮。2016年にはザルツブルクの劇場「Oper im Ber Festival」にてモーツァルトのオペラ「魔笛」を3公演にわたり指揮、好評を博す。2016年秋よりブラウナウ・ジンバッハ・楽友協会の副指揮者に就任。

これまでにオーケストラ指揮をハンス・グラーフ、ブルノ・ヴァイル各氏に、現代音楽指揮をヨハネス・カリツケ氏に、合唱指揮をカール・カンパー氏に師事。

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